院長ブログ

2017.04.09更新

1998年は私が歯科医師2年目の頃です。
この時には、なんと今でも驚くのですが、365日中360日は歯科の勉強のみに集中していました。
目覚めてから、寝るまで歯のこと以外は考えられない時期でした。
娯楽という娯楽は全て排除。
朝診療にでて、診療後は歯の治療の練習で、気付いたら夜の0時を回っているということもしばしばありました。
診療は週6日勤務し、お休みの日には講習会または専門書を読み漁っていました。
TVも漫画も映画も小説もカラオケも旅行も友人とのお食事も家族とも会わず、全てを歯科の世界を知るための時間に費やしていた時代。

この頃診療に来てくださっていた方がYさんです。
彼女は他院で左上の2番が悪いので抜歯しましょうと言われていました。
私が根の治療と歯周病の治療を行ったところ
少し動きはありましたが痛みがなくなり仮歯でも調子がよくなりました。
そこで彼女の選択は上に被せるものはセラミックスのメタルボンドでした。

技工士が専属にいた歯科医院でしたので技工士さんに相談して作製してもらいました。

抜歯する必要があると言われていた歯です。
どのくらい長持ちするかわかりませんよとお伝えしましたが
彼女はいいものを入れてくださいということで承諾してセットしました。

しらゆり歯科医院開業後も私のところに来てくださり、本日も定期検診にいらしてくださいました。
もう20年近くの年月が経ち、その2番はいまだに使用されています。

この2番を先生が入れてくれたから
まだ持っているのよとYさんは自慢そうに話してくださいます。

私は勉強したことを忠実に行い実践しただけです。
抜歯宣言されていた歯が20年の歳月が経っても立派に存在しています。

歯の寿命とはなんであるだろうかと思います。

昭和時代の治療では残せなかったものが平成の治療では残せること。

常に進化していく歯科医療ですが
最先端を勉強し確実性を増した時に採用している医療の選択。

Yさんから先生に治療してもらったから
こんなに長持ちよと言ってもらえるのが何より嬉しい出来事でした。

腰が曲がってきている状況をご本人も把握されていて
いつまで通えるかしらと言いながら通院してくれています。

あと10年間、左上の2番が長持ちしてほしいと思うばかりです。