院長ブログ

2017.09.07更新

2001年9月にしらゆり歯科医院を開院し、今年で17年目を迎えることになりました。毎年9月にはスタッフと一緒に文集を発行しています。文集を考える時に私は一年間の目標を立てています。 今年も「健康長寿を目指して」というテーマで歯の大切さを訴えていければと考えております。

 この言葉を選ぶ理由は、人間にとって幸せなことは何だろうと考えると 健康長寿が私たちにとって目指すべき幸せの形ではないかと思うからです。

 皆様は健康長寿でいるためにはどのようなことに気をつけていかなければならないかを考えたことはありますか?

 私は実践されている先輩から学ぼうと健康長寿の方々と日々交流を持つように努めています。 身体に痛みがなく、10代の頃のように自由に歩き回り日常生活を送っている80歳、90歳の方がいらっしゃいます。その方の嗜好や生活習慣や生き方を学ぶことが健康長寿についてわかることではないかと思っています。100歳まで目が見えて、耳が聞こえて、毎食のご飯を自分の歯でいただくような生活を夢でなく現実にしていく理論が分かれば、多くの方に貢献できるのではないかと思っています。

 私が開業した2001年に掲げた「健康は歯から」。

 この言葉は17年目を迎えて多くの患者さんと交流を持つことで改めて重要な言葉だと実感しています。 私の研究テーマは「歯の健康から全身の健康へ」です。

 今は、健康長寿の方々に話を伺ったり一緒に食事をしたりして、健康長寿のことを探っています。

 

 友人の85歳の女性は、毎回綺麗にお化粧をしてお洋服を季節ごとに合わせ、お洋服に合わせたアクセサリーを身につけて、まるでデートをするような姿で約束の時間に目の前に現れます。 ちょっとくらい辛くても、少し足や腰に痛みがあっても、動かないと動けなくなるからと言いながら、おしゃれを楽しみながら一人前のお食事量を食べ、私と同じの量のワインを飲み干します。 また毎年自分の背が低くなった言いながら、背の高い若い男性、特に好みの男性がいると目をキラキラさせて乙女のように可愛らしくなっています。心はいつも乙女のように若々しくいることが85歳の彼女の元気の源なのではと感じています。 相手が不愉快にならない会話や目配り、気配りが出来ていて、女性として素晴らしい生き方をしている女性だからこそ健康長寿なのだろうと思います。 彼女のような85歳ならば人生がどれだけ豊かだろうかと思います。

 別の80歳の女性も2ヶ月に一回くらいは海外に行って仕事をしています。 小柄ながら、お食事は一人前をしっかり食べきります。 記憶もしっかりしていて、約束の日時にはピタリと時間通りに現れます。

 2人に共通しているのは、おしゃれをすること、たくさんの人と会話を楽しむこと、一人前の食事量を食べられること、ワインを飲むこと、新しいものに興味を持つこと、添加物の食事をしていないこと、お肉を噛むことが出来る咀嚼機能を持っていること、認知症でないこと、一人で歩けること、手先を使う趣味をもっていること、日常生活を一人で行えることなどがあります。 その中で重要なことは、歩けること、手先を常に使っていること、歯で噛めること、お話が好きなことではないかと思っています。足、手、歯、会話が衰えないことが重要に思います。

 80歳を超えても元気でいる彼女たちを見ていると、それに加えて好奇心と食欲が健康長寿の秘訣のようにも思います。

 

 私はこの1年間はKENKO研究会という勉強会を立ち上げて歯だけではなく健康でいられるための研究を行いました。

 がん対策や血管を劣化させないこと、免疫機能を向上させることなどを食事や生活習慣などの項目を挙げ、新しい知識をたくさん増やしてきました。

 また昨年は歯の噛み合わせが体を歪め、頭痛、肩こり、腰痛、膝痛など姿勢を崩したり痛みを出したりすることが証明されたのでその勉強をしていましたが、今年は脳疾患や心疾患が歯から引き起こされていることが証明されました。このことを多くの方に理解していただきたいと考えています。

 

 慢性炎症という言葉をご存知ですか? 慢性炎症には歯周病の歯周ポケット内の潰瘍、根の先に出来るおできのような根尖病巣、内臓脂肪の3つが代表になっています。 歯周ポケットが4ミリ全体にあった場合、潰瘍形成は手のひらと同じだけあると言われています。 手のひらがただれて真っ赤にグジュグジュした状態だったら、全ての人が慌てて病院に行き治療を受けます。 しかし歯周ポケット4ミリが全体にあっても沈黙の病気ですので痛みも感じず ほとんどの人が 病気とは気づきません。歯周病を放置していると手のひら全体に潰瘍がある状態と同じように、気づかないうちに慢性炎症のトラブルが身体に起こされているのです。 慢性炎症が起きたまま、日常生活を続けているとこの炎症によって引き起こされた物質が、身体の細胞を傷つけることが証明され、近年、がんになる引き金も慢性炎症と言われています。 その中で最も傷つけられていくのが血管です。慢性炎症が血管を傷つけていくことにより、動脈硬化が起こります。さらに高血圧が引き起こされその先には、脳梗塞、心筋梗塞などの命の危険と隣り合わせの病気が待っています。

 20代から歯周ポケットが深い方は、慢性炎症により身体が傷つけられる時間が早く訪れるため気をつけなければなりません。若い頃から正しい歯磨き法を身につけて、虫歯や歯周ポケットが4ミリにならないようにすることが大切です。根の病気も放置しておくことで同じように炎症が血管に作用して循環器系のトラブルになることがあります。 当院の患者さんの中に診断で根尖病巣があると指摘していたにもかかわらず、本人が治療を放置していたら、心臓の弁に菌が飛んでしまい、心臓手術をすることになったという方がいました。 その後感染源の奥歯2本を抜歯することになりました。根の病気が全身に与える影響があると思うと本当に怖いことだと思います。 歯の病気が全身の病気に発展していくことがこの数年マスコミにも大きく取り上げられ、全身への影響が以前よりも解明されてきています。

 「歯が丈夫であれば身体をも丈夫でいられる」 歯科医師20年目にして経験した内容は、歯の健康が全身の健康に結びつくということがはっきりと実感されたことです。 私の両親は70歳になり、歯のメインテナンスに1ヶ月に1回通って貰っていますが、70歳になると何らかのトラブルは起き始めます。 歯の治療がある場合には噛めないときがあります。その時には私は、早く治療をしないと、認知症になったり、身体の機能を悪くしたりするのではないかと毎回ヒヤヒヤします。 噛めないことにより認知機能の低下や足腰首のトラブルになることが分かっているため、両親の歯が噛めないと介護しなくてはならない恐怖を感じ本当に心配してしまいます。

 

 当院では予防歯科を掲げていますが、歯が健康でいるためには歯が悪くなる前に歯のトラブルサインを見逃さず、ケアすることが大切だと痛感しています。

 当院のスタッフは患者さんの健康をみんな願って仕事をしています。 皆様の歯や全身の健康にトラブルがないことを願いながら 17年目もしらゆり歯科医院で患者様と真剣に向かい合いながら治療、定期検診を進めて参りたいと思っております。

 

 最後に今年から始めた表彰制度をご紹介いたします。 当院では2017年4月から80歳で28本あり歩いて通院されている方を対象に表彰制度を導入しました。80歳で28本を維持することは健康長寿の最も重要な要素だと思い、多くの方に歯を健康に維持してもらい、健康長寿で過ごしていただきたいと思っております。 まだ現在は表彰者はお1人ですが来年、再来年には表彰者が増えることを期待しています。

 

 皆様の健康長寿のお手伝いができる歯科医院でありたいと今年度も励んでいきたいと思います。

 

 

歯肉         

 

 

                                             2017年9月1日 医療法人社団しらゆり会  理事長 くぬぎ 初穂